1.コーポラティブハウスのいま

司会
はじめに、昨年のリーマンショック以降、不動産不況などと言われていますが、コーポラティブハウスもその影響があるのでしょうか?
石川
景気全般が低迷していますので、消費全般の落ち込みに住宅も無縁ではありません。一時的には不動産への事業融資が出にくい状況となっていますが、組合員が融資を受けて土地の購入、建物の建設などを進めるコーポラティブハウスでは、ほとんど影響はないです。むしろ以前に比べ、不動産デベロッパーが土地を買えなくなってきた分、土地価格は下がってきているので検討出来る土地が増えてきています。また、値下げ等によらず、元々中間経費を省けるコーポラは景気に関わらず一定のファンがいます。→

 

伊藤
設計者側から見ても、昨年は原油や鉄の価格、現場の職人不足など、工事費も高くなっていましたが、近頃はどちらも比較的落ち着いてきています。また今年に入ってからは、ゼロワンオフィスの新規のメンバー登録がかなり増えてきているので、コーポラティブハウスに対する期待度も高まっているようです。
石川
確かにそうですね。タウン・クリエイションも新規メンバーの登録数が以前よりも伸びてきています。時節柄、割安な物件を求める、と分析する人もいますが、景気が落ち込んでいる時だからこそ、改めて自分が住む家のことを考えて、自分に合った家をつくろうという方が増えているような印象も受けています。

2.コーポラティブハウスへの思い

司会
コーポラティブハウスを始めたきっかけと、現在のコーポラティブハウスについて感じている事を聞かせて下さい。
伊藤
私がコーポラティブハウスを始めた当初は、経済効率が最優先されがちな分譲マンションに対して、設計者や入居者の視点から建築を作ることができれば、より良い住まいが実現できるだろうという思いからでした。そしてある程度存在が認知された現在としては、逆に分譲マンションライクなものや、デザイン性に偏ったコーポラも増えてきているので、それに対しては、危機感というか、停滞感のようなものを感じています。
石川
同感ですね、私はバブルの絶頂で社会人になり、当初、大手デベロッパー系列の管理会社に勤めていたのですが、当時のデベロッパーが供給するマンションの単調さと価格の高さに疑問を持ち、管理組合の運営に対しても違和感がありました。ちょうどその頃、系列のデベロッパー出身者が起業した「都市デザインシステム」が立ち上げたコーポラティブハウスこそが、まさに住まい手の発想でつくれる住宅だと共感し、16年程前からコーポラに関わっています。→
 
今ではユーザーと一緒につくるコーポラの楽しさが病みつきになり、現在までに40数棟のコーディネーターをしてきております。
司会
これまでお2人ともに面識は無かったと伺っていますが、お互いの印象を聞かせてもらえますか。
伊藤
私から見たタウン・クリエイション、そして石川さんは、コーポラティブハウスだけでなく建物管理からマンション建替えまで、幅広い知識と経験を有し、ひとつひとつの仕事を誠実にされているなぁという印象がありました。そして、実際にお会いしてみるとイメージ通りの方で、住まいに対する価値観・問題意識など、共感できる部分がたくさんありました。
石川
私も伊藤さんとゼロワンオフィスについては、設計事務所でありながらコーディネートもされている希少な会社で、特にデザインにおいては、参加者・設計者それぞれのカラーが出ている魅力的な設計をされていたのが印象的でした。商品をつくるのではなく、設計の立場から住まい手の事を考えてものづくりをされている事は竣工した建物を見るとそのプロセスの匂いから分かるんです。

3.コラボレーションのきっかけ

司会
今回対談を行うきっかけとなったのは、タウン・クリエイション×ゼロワンオフィスのコラボレーションによる、初の共同プロジェクトを控えての事と聞いています。それはどういう経緯だったのでしょうか?
石川
コーポラティブハウスは今まで、小規模の会社が独自に工夫を凝らしながら企画してきましたが、まだまだ数も少なく「ニッチ」と呼ばれる域を抜けていません。これからは数少ない コーポラを継続している者どうし、より良い企画やコーポラだから出来る事をもっと広げていく時期に来ている事をお互い感じていたと思います。そして以前から、ゼロワンオフィスさんと交流のあった当社のスタッフの引き合わせで、伊藤さんと色々なお話をするようになりました。そのような折、今回はある地主さんが、大きなきっかけを与えてくれました。当社が、その地主さんの所有する土地の有効活用、相続対策、売却用地などついて、ご相談を受けた際に、敷地の1区画をコーポラ用地として提供して頂く事になりました。その地主さんは、ゼロワンさんの事も良くご存知で、竣工事例などをご覧に→
 
なり、とても好意を持たれましたし、ただ単に土地を売って経済的に良ければいい、という方ではなく、ご先祖から受けついだ土地の特性を活かして、長く人に愛される建物をつくって欲しいという明確な希望を持っていらっしゃいました。そのような経緯で、何度かお話する中で意気投合し「タウン・クリエイション×ゼロワンオフィス」のコラボレーションに発展しました。
伊藤
そうなんです。庭の緑を眺めながら、私からも感じるままにプロジェクトへの思いを告げたところ、地主さんの迷いも吹っ切れた様で、一気に話がまとまりました。このコラボレーションは、地主さんも喜んでらっしゃいましたし、私自身も非常に楽しみにしています。また、石川さんは先行して打合せを進めており、すでに地主さんからの信頼を得ていたので、「すごいな、この人。」と思いつつ、私は設計者の思いだけを語っていればよかったので、「いいな、こんなポジションも」って、実は思ってました。
石川
しかも、偶然お互い9棟のコーポラティブハウスを供給しており、次が10棟目の節目を迎えるというタイミングである事から、只ならぬ運命を感じております。(笑)

4.コラボレーションだからできること

司会
コーポラティブハウスをやられている会社同士のコラボレーションは、あまりありませんでしたが、コラボレーションによって、どういったところがこれまでと変わるのでしょうか?
伊藤
同じコーポラティブハウスを手がけてきたという点では変わりませんが、共同でプロジェクトを進めるということは、お互いのコーポラに対する考え方や実績を掛け合わせるという、新しいチャレンジになります。そしてゼロワンとしては、より建築設計に特化できることが1番のメリットです。また、戸建住宅にはない「集まって住む」ことを考え直す中で、これからの住まいに対する思いを実現したいと思っています。
石川
コラボレーションによって根本的な何かが大きく変わるという事はないと思いますが実績のある2社がお互いの強みを掛け合わす事により単なる1×1=2ではなく、=3や、=4になるようなプロジェクトがきっと実現できるはずです。それと、さっきも少し話しましたが、お互い次が10棟目となる節目のコラボレーションプロジェクトが、今までコーポラを知らなかった人たちまで伝わり、→

 

 
コーポラ=一部のマニア的なイメージを払拭出来ると思っております。良い住宅というのは、奇をてらった企画ではなく、気持ちよく、長く使える本質を追求することだと思います。また、建築だけでなく、良い敷地を選定することや、入居後の管理・運営についても気持ちよく住み続けられる工夫や提案もこの仕事では大きな要素だと思います。2社のプロが一緒に取り組む訳ですから、随所に渡ってお互いの良さを発揮できると思います。
伊藤
こうやって石川さんと話をしていると、今までの思いを実現するための一歩を踏み出す勇気がわいてきます。きっといいコーポラになりますよ。それには、入居者や設計者、コーディネーターだけでなく、地主さん、施工者、近隣の方々など、関わった人々みんなが喜べるようにしなくてはいけませんね。

5.初の共同プロジェクトについて

司会
この度、初となる共同プロジェクトは、どのようなものになるのでしょうか?
伊藤
最初に敷地を訪れた時にお爺様のアトリエだったという部屋を見せてもらいました。吉祥寺のこの地において芸術家として居とアトリエを構え、深く緑に包まれたこの「場」に時を重ねたオーラのようなものを感じて思わず、これは残さにゃならん!と使命感にも似たようなものがこみ上げてきました。まず浮かんだキーワードは「保存と継承」です。これは単に今あるものを残す、保存すると言うのではなく、もはや町の一部となっているこの雰囲気と人の心や思いを100年先まで見据えて、継承することを模索しようと言うことです。
石川
プロジェクトの計画地は、明治時代から継承されてきた、約100年に渡る歴史をもった住宅です。代々お住まいになった方々は、芸術に関わるお仕事をされており、その「魂」、「文化」、の紡ぎを残し、これに新たに集まる人々の思いを込めて、これからの100年を考えられるようなプロジェクトを考えています。→

 

 
これから新築して住む人たちも、この土地や建物に愛着を持ち、後世にいろいろなものを残していけるようなものにしたいと思います。 また、今回の計画地が吉祥寺という人気の高い場所であり、自然の多い住宅地である事から、周辺環境との調和、計画地に既存する樹木の保全などを可能な限り配慮したいと思っております。
伊藤
また設計者としては、これからの住まいに対する提案もこのプロジェクトを通じて実現したいと言う気持ちも出てきました。一世紀前には、鉄とガラスとコンクリートが近代化の象徴のように言われました。半世紀前の鉄腕アトムの世界では、ハイテクで金属やメタリックな近未来が描かれていました。大げさに言えば、21世紀が始まった今こそ、次なる近未来の住宅が示されるときではないかと。その姿はかつてイメージしていた近未来とは正反対の「人にやさしい有機的な住まい」なのではないかと思うのです。身近に緑があり、光や風など周りの環境、広くは地球と共に生活する。そんなプロジェクトにしたいです。

6.今後の展開など

司会
今後の展開など、お聞かせください。
石川
今回のコラボがきっかけとなって、コーポラティブハウス業界の転換期となればと思っており、今後こういった共同プロジェクトを増やしていければと考えております。もちろん独自のプロジェクトは今後も企画していきますし、ゼロワンオフィスさんも同様のスタンスだと思いますので、これからもお互いに刺激を与えながら「みんなが喜ぶ(私たちスタッフも含めて)」コーポラを企画していきたいと思っています。
伊藤
今まではタウン・クリエイションもゼロワンオフィスも、不器用な仕事振りで年に1〜2棟しか実現できていませんでしたが、今回のプロジェクトを機会に、お互いが高めあっていける存在になれれば、企画面でも、プロジェクト数という面でも、コーポラティブハウスがより多くの人に認知され、選ばれるようになるのではないでしょうか。そして、コーポラに留まらず、お互いのアイディアを持ち寄って、新しい住まい方を提案できればと思っています。

吉祥寺東町に、タウン・クリエイションとゼロワンオフィスがコラボレートした、コーポラティブハウスが動き出します。

受け継がれる 新しい文化を創造する コーポラティブハウス

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「住環境」のスペシャリスト TOWN CREATION 代表 石川 修詞×「住む」をデザインする ZERO-ONE OFFICE 代表 伊藤 正